「すべてジェンダーの問題だったのか!」。女性誌「VERY」などで活躍するモデルの牧野紗弥さん(37)は2年前、長年感じていたモヤモヤがどれもジェンダーに起因するものだったと突然気づいたそうです。そのきっかけとは――。
「もう限界。1週間私が今までやってきたことを全部やってみて」。3人の子どもの育児と仕事に追われていた2年ほど前のこと。家事と育児のボイコットを宣言しました。
夜中にキッチンで涙が止まらなくなった
家事はもちろん、小学校、幼稚園、保育園で習い事も生活時間も異なるなか、スケジュール管理や授業料の振り込み、付き添い、お知らせのプリントを読んだりメールに対応したりするのもすべて私。頭が回らなくなり、夜中にキッチンで涙が止まらなくなることもありました。
1週間が終わると、夫からこんなメールをもらいました。「毎日次から次とやることがあり、パニックに近い状況になることを実感した」「紗弥ちゃんはスイッチオンの状態が24時間続いていたのに、自分はそうではなかった。気づく機会をくれてありがとう」
ハッとしました。自分も母親がワンオペの家庭で育ち、「私がやるのがあたりまえ、私がやった方が効率がいい」と思い込んでいたのです。
その後、社会学者の上野千鶴子さんが2019年春、東京大学の入学式で述べた祝辞のことを知ったほか、VERYで上野さんが「女の子と受験」について解説した記事を読みました。「ジェンダー」という言葉くらいはその前から知っていたかもしれませんが、「私が長年モヤモヤしていたことは、全部ジェンダーの問題だったのか!」と、初めてジェンダーが「自分事」になりました。
「夫に所有されている感じがする」のは…
祖母から「姓を残して」と言われて育ったこともあり、25歳で結婚した時、「牧野を名乗り続けたい」と口にしました。でも周囲を説得できるような知識もなく、あきらめたことがありました。ジェンダーの問題に気づいてから、「夫に所有されている感じがする」のは夫の姓に変えたからだと感じるようになりました。
いまは法律上「離婚」し、事実婚に切り替える準備を進めています。上の2人の子には自分で姓を選んでもらいます。子どもたちは当初、「法律上は離婚」になることを怖がりました。まずは「親が離婚した子どもは幸せじゃないの?」と話し合い、離婚は選択肢の一つであること、わが家の場合、生活スタイルは変わらないことなどを丁寧に説明しました。
ジェンダーの問題に気づいてから、子どもたちと性のことや結婚観など何でもオープンに踏み込んで話せるようになりました。「ママにはママの人生がある」と理解したようで、「ママはすごく楽しそうになった。今のママが好き」と言ってくれます。
ただ、ジェンダーも性教育も、そして「なぜ勉強しなければいけないのか」というような根源的な問いへの答えも、いまはすべて家庭で担わなければいけない。もっと学校や社会で子どもに伝えてくれる機会があればいいのにと思います。家庭から議論を起こさなければ、と思っています。
記者サロン 牧野紗弥さんと学ぶ「家族とジェンダー」
「家庭内ジェンダー平等」を掲げ、勉強と発信を続ける牧野紗弥さんと一緒に学ぶ、3回連続のイベントを開催します。
第1回は25日午後1時、ジェンダーの問題を男性の目線から考えたエッセー「さよなら、俺たち」などの著書がある文筆業の清田隆之さんを招き、「夫を『男らしさ』から自由に」をテーマに語っていただきます。
第2回は7月9日午後5時、弁護士で元フジテレビアナウンサーの菊間千乃さんがゲストの「私が『夫婦別姓』を選ぶ理由」、第3回は同20日午後1時、上野千鶴子さんがゲストの「性別の呪縛、受験にも」です。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル